· 

共同体感覚

国際アドラー心理学会において、私の先生でもあるJohn Reardonのプレゼンに行きました。共同体感覚とは、よく「所属感」、「安全感(信頼感)」、「貢献感」として世に伝わっていますが、英語ではそれぞれBelonging, Secure, Significanceとして表現されています。これらの英語をどのように日本語に訳すかは、私にとってはあまり問題ではありません。大切なのは、その文脈や意味をしっかりと抑えることで、言葉から来る意味で捉えてしまうと大きな誤解を生んでしまいます。 特にアドラー心理学の用語は誤解されやすいです。

 例えば「相互尊敬・相互信頼」という用語がありますが、これは「他者を尊敬し、自身を尊敬すること・他者を信頼し、自身を信頼すること」なのですが、私はミネソタ・アドラー心理学・大学院に留学するまで大変な誤解をしていました。言葉上での意味として「相互尊敬・相互信頼」を捉えており、それは「お互いに尊敬しあう、お互いに信頼しあう」ものだと考えていたのです。 このように捉えてしまうと、対人関係において全く異なったアプローチをすることになります。それは、相手に期待をし、相手を動かそうとするのです。例えば「私はあなたのことをこれだけ尊敬・信頼しているのに、あなたは私を尊敬・信頼してくれていない」と、対人関係におけるトラブルを生む入り口となるわけです。

 話を戻しますが、この「共同体感覚」は、実に説明に困るものです。実際に、アドラーは、Belonging「所属」, Secure「安全」, Significance「貢献」という用語を使用はしているものの、この3つが共同体感覚だ、とは一切言っていないのです。こういう所は、大学院生時代にJohnのクラスで教えてもらったことも多く、今回は久しぶりのJohnの講義を聞けたことを嬉しく思っています。